ロックギター講座 ピック編
今回のロックギター講座は「ピック編」です。
皆さんピックってどんなものを使用していますか?
よく見かける「ピックの選び方」的な記事を見ているとピックの種類を説明しているだけで、ピックの使い方には触れていないものが多いです。
ピックの種類の前に「ピックの使い方」が分かっていないと、どんな種類のピックが自分の演奏スタイルに合っているのか分かるはずもありませんよね?
その他にピックの硬さの違いは何の為にあるのか?とか形の違いは何の為にあるのか?とかも基本的にはプレイヤーの演奏スタイルを理解してこそ初めて分かるものです。
では一つずつ説明していきますね。
ピックと弦のあたり方いろいろ
まずピックが弦にどのようにあたることで、どんなことが起きているのか考えてみましょう。
上記の図で説明していきます。
図A:弦に対して90度の位置からピック先端で弦を弾いています。
例えば野球のバットを使って真横になっている鉄の棒に90度からまっすぐに振り下ろす想像をしてみて下さい。
普通にバットが弾かれる、または折れると思いませんか?
更に想像していただいてバットを「ピック」に、鉄の棒を「弦」だったらと想像してみて下さい。
鉄の棒は「弦」になったので90度から「ピック」でまっすぐ振り下ろされても弾かれることは無いと思いますが、弦の「抵抗力がピックに伝わる」想像が出来るかと思います。
つまり、ピックと弦がケンカしやすいのでコントロールが難しいってことですね・・。
また、ピックの先端部で弦を弾いているので「鋭い音」「綺麗な音」を出せますが、その分ピック先端の消耗が早く、ピックの交換頻度も多いでしょう。
図B:弦に対して少々斜めに角度をつけダウンとアップで弦にあてる面を左右で使い分けている。
両側面を使って弦にあてているので弦の抵抗を受け流しやすいのでコントロールしやすいというメリットがあります。
そして「ピッキング編」で説明した「手首と腕の動かし方」をあてはめると弦に対して斜めに手首を動かすことになります。
ピックの両側面で弾いているので少々、弦と摩擦する分、少々太い音になりますがロック系のサウンドには適していると言えます。
図C:弦に対して図Bより更に角度をつけてピックの片面だけを使用して弦にあてています。
ピックの片面だけをあてているのですが、弦にあたる部分が大きい為、「擦る(こする)」的な感覚が強くなります。
しかし、弦の抵抗感は最も弱く出来ますのでコントロールしやすいです。
最もピックと弦があたる箇所が大きいので太い音になりますが、ロックからハードロック・ヘヴィメタルなどには好まれるサウンドになるでしょう。
では上記で説明した図A~Cまでを踏まえて「手首や腕の動かし方」から見るピックと弦のあたり方を見てみましょう。
図Dの場合は図Aのピック先端を使用し、弦に対してまっすぐ平行にあたっている場合と図Cのようにピック側面を深く使用している場合の2パターンに適した「動かし方」と言えます。
図Eの場合は図A~Cまで全てのパターンにあてはまりますが図Aのピック先端を使用する場合は非常にコントロールも難しく、更にはピックの消耗度合いもかなり大きいので適しているとは言えないでしょう。
(※図Eのピックの角度は決まっているものではありません。プレイヤーそれぞれの感性によって角度の度合いも様々です。)
図Bのピック両側面を使用している場合は図Eの様に斜めに動かさなければ、ピック両側面を上手く使えないので、おのずと図Eの動かし方になります。
図Cのピック側面(幅広)を使用する場合は図Dの動かし方にも適用されますが、図Eの動かし方をすることで弦と摩擦する度合いが大きくなり、更にエッジの効いたサウンドになります。(ちなみに私はこのスタイルでジャズⅢという涙型のピックを使用)
しかし、あまり角度をつけすぎるとアタック感が無くなり、音の強弱がつけにくくなります。
上記の説明の様にピッキングと言っても一言では表せない様々なスタイルがあるんですね・・。
その他にもまだまだ違ったピックの使い方もあるんですね。
あなたが普段の演奏でピッキングしやすいと思えているスタイルはどんなものなのか?
一度、研究してみると良いですね。
ピックで音を出すということ
ギターはピックを使って弦を弾いて音を出す楽器です。
つまり音楽として考えるとピッキングの強弱で大・中・小の音量をコントロール出来なければいけません。
では「大きな音」ってどのくらい弦を弾けば「大きな音」なのでしょうか?
例えば硬いピックを使用していれば、少々ピックで弦を引っ掛けるように強く弾くことで「大きな音」が出ます。
「パチン!」と弦が鳴るはずです。
しかし柔らかいピックを使用して弦を引っ掛ける様に強く弾くと、ピックが壊れてしまいます。
つまり、ピックで弦を引っ搔いてはいけないんですね。
ピックは弦を弾く(はじく)ものなんです。(又は少々擦れ(こすれ)るもの)
逆に言うと「ピックが弦に引っ掛かる」感覚があるうちは、まだまだ練習が必要だということです。
もちろんワザと引っ掻く場合もありますが、意図的に引っ掻いていない場合以外で弦にピックが引っ掛かっている感覚があったら「何故引っ掛かる?」を分析してみましょう。
私がおすすめするのは、定期的に「エクストラ・ソフト」又は「ソフト」のピックを使用して練習してみて下さい。
すぐにピックが壊れてしまう場合は「ピッキングが正しくない」と思って良いでしょう。余計な力みがあったり、弦に引っ掛かっているということです。
逆にピックが壊れなくなったら「正しいピッキングが出来ている」又は「正しいピッキングを理解している」ということです。
ではここでエピソードを一つ・・。
故エドワード・ヴァン・ヘイレンの使用ピックはエクストラ・ソフトというとても柔らかいピックでした。
若かった私は彼のサウンドに影響され、ピックの種類を真似て数枚購入してみたのですが・・・ものの見事に一日ももたずに全て粉砕してしまいました。(笑)
何故、あっさりと粉砕してしまったのか?
簡単な話です・・指の力にまかせて・・力ずくで弦を引っ掻く様に・・間違ったピッキングをしていたからです。
弦を引っ掻く:ピックで弦をキャッチ⇒弦が伸びる⇒キャッチしているピックを放す。
弦を弾く(はじく):ピックが弦にあたる⇒あたったと同時に通過してはなれる。
弦を引っ掻く様に音を出す時は図Aのピックのあて方で図Dの様にまっすぐ動かせばピックが粉砕しない程度にコントロールしやすいのでしょうが演奏中ずっとやり続ける奏法ではありません。
基本的には「弦を弾く」ことをメインにし、「弦を引っ掻く」のはキメの部分だけです。
ということは・・エクストラ・ソフトの・・存在意義って・・・何?って思いませんでしたか?
デメリット:大きな音が出せない・壊れやすい
メリット:小さな音が出しやすい・音の強弱がつけやすい
これはギタリストとしての一つの「在り方」又は「選択」だと思いますが、彼の機材は基本的に「大きい音を出す」ことがメインに考えられたものでした。
つまり「大きい音はアンプや機材で作れる」から「演奏では小さい音をコントロールする」ことでギターの表現力の幅を広げていたのでは?と考えられます。
どんな種類のピックを選択するか?は、ギタリストとして演奏家としてとても大きな要素を占めるものになりえる一つと言っても過言ではないでしょう。
ピックの種類を考えてみる
それではピックの種類について考えてみましょう。
基本的に「涙型」と「おにぎり型」の2種類ですが大きさの違いはピックのホールド感覚が変わってきます。
つまりピックの固定力が強く出来るのでストロークやカッティングがしやすくなります。
ピックの硬さにもいろいろあります。
硬ければ弦を弾く時の抵抗感が強く感じられますが大きな音が出しやすく、小さい音のコントロールは少々難しくなるでしょう。
逆に柔らかくなれば弦に負けて大きな音が出しにくく、消耗も早いですが小さい音をコントロールしやすくなり、音の強弱もつけやすくなります。
ちなみに世界的ギタリストの多くはハード又はエクストラ・ハードの「涙型」ピックの使用率が多いように思われます。
つまり、ギターと弦の特性を最大限に生かし、極力シンプルなアンプ・機材セッティングを好むものです。
簡単に言うと、それだけ自分の演奏力に自信があるあらわれですね。
では最後にポールギルバートの演奏者目線で見れるピッキング動画がありましたので載せておきます。
私の恩師によると、アメリカ・ロサンゼルスのMITで「一番綺麗な音を出していた」ということです。
では「綺麗な音を出すピッキング」をどうぞ!!!
今回のロックギター講座は「ピック編」でした。
ではまた・・。